2016年3月26日土曜日

おすすめマンガ002 和的官能をしっとりと描く『ラブ・クラッシック』

「……肉欲って、食肉欲かよ!」と昨日の記事をご覧になって肩透かしをくらった、という方。
そういう意味では、今度はご期待ください。

本日のおすすめは、
出版が2003年なので少し前の作品になりますが、
私の大好きなマンガ家であらせられる
比古地朔弥先生の『ラブ・クラシック』(太田出版)。
明治から昭和初期を舞台にした、ラブストーリーの短編集です。



収録されている6編で描かれるのは、いずれも
「男女7歳にして席を同じゅうせず」が社会通念だった時代の恋。
身分制度や、人様の目線にしばられまくりの封建的な時代の物語です。

駅のホームで朗読する少女の声に魅入られた
男子学生の恋心を描く『背中合わせのリルケ』

子どものころに覚えた悪い遊びが忘れられず、、
毎夜押入れに忍び込む人妻のストーリー『かくれんぼ』

明治半ばのコンドームにまつわるコメディ『薬屋小話』

『ゆく春の』は、寝たきりの若様と、お世話係の少女の小さな秘め事の物語です。

『しらゆり慕情』は、夜伽役の年上の女性に、
あやまかな思慕を抱く若い殿様のお話。

最終話である『白花曼珠沙華』では、
かつておかした罪を許されたいと願う
リウと辰治の物語が描かれます。

どれも、
ほんの100年前までは、もしかすると当たり前だったかもしれない恋物語。
ひめやかなのにおおらかで、
初々しくも淫靡な、
比古地先生がイメージするノスタルジックな性の世界が描かれます。


読後には、主人公たちのときめきや思慕、肉欲や嘆きが、
私たちの心にしっかりと息づきます。
初めて読んでから十年以上経ちますが、
本棚に背表紙を見つけるたびに、つい読み返してしまう作品です。
すごい好き。

『ラブ・クラシック』は、
「電子書籍のソク読み」さんのサイトや、
kindleをお持ちの方はアマゾンのページから
試し読みができます。
kindleのほうはけっこう長く読めますよ。

比古地先生の作品では、
『けだもののように』も非常に読み応えがあります。



こちらも、先生のHP『ヒコチガイド』内の、
「けだもののように」の特設ページで試し読みができるので、
ご興味ある方はぜひ。

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