2016年6月25日土曜日

おすすめ本007 戦慄の実話ホラー!『人体冷凍 不死販売財団の恐怖』

「永遠の命がほしい!」なら必読!
〝不死を売る財団〟のノンフィクション


誰だって死ぬのはいやなものです。
「そのへん、お金の力でなんとかならないものか……」
と考えて、実際にトライした人たちがいます。
「アルコ―延命財団」の関係者や、そのお客さんたちです。

この財団が行うのは、「クライオ二クス(CRYONICS)」という処置。
これは「病気で死んだ人の身体を、冷凍保存する」行為です。

なんのために?
その病気の治療法が開発された未来の世界で目覚めて、
人生をやり直すために。

SF映画でときどき見かける「コールドスリープ」に、
ホントに着手してしまったのが、
「アルコ―延命財団」(米国・アリゾナ州)なのです!

『人体冷凍 不死販売財団の恐怖』
(ラリー・ジョンソン + スコット・バルディガ著
 渡会圭子訳/講談社/2010年刊)
の著者であるラリーは、あるきっかけから、
「アルコ―延命財団」で働きはじめます。
そこで見聞きした、
信じられないような体験がつづられているのが本書です。
オビにも記してありますが「実話」。実話ホラーって書いてあります。

カバー写真は、
冷凍保存の処置を施される遺体の頭部。
本書には処理中のショッキングな写真も掲載されています。





























「クライオ二クス(人体冷凍)」とは、
具体的にどんなものなのか?


さて、「クライオ二クス(人体冷凍)」にまつわる手順は、だいたい次のとおり。

 ①クライオ二クスを希望する登録者の死期が迫ると、財団スタッフが登録者のそばに待機。

 ②医師の死亡宣告を受けた直後、財団スタッフが冷凍保存の準備開始。

 ③遺体の全身を氷水に浸し、人工呼吸装置で血液循環を維持。
   その状態で、体内に凍結防止剤などを注入し、脳や臓器を保護。

 ④財団の施設に遺体を搬送後、体内の血液を全て抜き、保存液を注入。

 ⑤液体窒素により-196℃に保たれ、
   登録者の病気治療が可能な技術が開発されるまで施設内に保存。

要するに、脳細胞や全身の細胞がダメージを受ける前に、
保存液を注入して、凍らせちゃえ!ってことですね。

ビデオの9分あたりから登場する銀色の筒が、遺体を保管する専用冷凍庫。




















著者であるラリーは元救急救命士で、
アルコ―財団では、
登録者の遺体搬送などに手を貸していました。

しかし、財団スタッフたちのものすごいいい加減さ……
遺体は暑さで痛めちゃうわ、
遺体処置に人間を診る医師ではなく獣医を使うわ
……などを目の当たりにして、
ラリーは財団に不信を抱き、
独自に財団についてやクライオ二クスについての調査を始めます。

で、ラリーが最終的にたどり着いた結論は、
「遺体は凍らしちゃアカン!」ということ。

結局のところ、凍らせた段階で細胞が壊れてしまうので、
(細胞に含まれる水は、氷になる際に膨張するので、細胞壁を壊してしまう)
一度メタメタに破戒された細胞を元通りに復元できる技術が開発されない限りは、
「クライオ二クス」は無意味なんだそうです。


クライオ二クスの費用は、
全身で約1000万円、頭部のみで約500万円


ちなみに、クライオ二クスにかかる費用は、
冷凍保存をする際に、全身保存で約15万ドル、
頭部のみ(!)の保存で約8万ドル。
冷凍保存をした後は、毎年年会費を払う必要もあります。

お金持ちじゃないと無理、ということですが、
登録者には、
メジャーリーガーで「打撃の神様」と呼ばれたテッド・ウィリアムズ(1918-2002)や、
エミー賞を受賞した脚本家ディック・クレア(1931-1988)などがいるそうです。

アルコ―財団の異常性に危機を感じたラリーは、
米国の主要メディアなどを通じて、内部告発を行います、
その結果、アルコ―財団に執拗な脅迫を受けるようになるわけですが……。

結局のところ、アルコ―財団がやっていることは、
壮大な詐欺なのでしょうか?

本書によると、「冷凍人体技術」とはある種の信仰なのではないか、ということです。
死を恐れる人々にとっては究極の夢であり、
その夢が破れることは、耐えがたい苦痛なのでしょう。

現在も、アルコ―延命財団が維持されているのは、
そうした信仰の信者が世界中にいるということの証ではないでしょうか。
アメリカやロシアには、同種の団体がいくつかあるようです。

ハズレたらハズレたで、
結局、人間はのめり込む。


私は本書を最後まで読んだときに、
『予言がはずれるとき
 この世の破滅を予知した現代のある集団を解明する』
(L.フェスティンガー H.W.リーケン S.シャクター著
 水野博介訳/勁草書房/1995年刊)
という本を思いだしました。



「大洪水にもならず、救出のためのUFOも来ない。
そのとき、教団はどうなったか。」
とオビに記されているように、
信じていた予言が成就しなかったとき、人はどうなるのか
を書いた本なのですが……。
結局のところ、予言がハズレたらハズレたで、人はさらにのめり込むようです。

これって「コストをかけちゃった人ほど、過去にした決定を覆せない」という、
いわば「サンク・コスト(埋没費用)」状態だと思うのですが、
クライオ二クスも一緒なんじゃないでしょうか。

アルコ―の財団の科学顧問には、
人工知能やロボット工学、ナノテクノロジーの世界的権威が名を連ねているのだそうですが、
こういう「研究に人生のすべてを懸けてきました!」みないな方ほど、
もしかすると修正が効かないのかもしれません。

「うん、ほどほどに生きよう!」と思える良書(私的には)。
最後にもう1回言いますが、実話ホラーです。

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